『籠の中の乙女』を観た!【ランティモス】

籠の中の乙女 4Kレストア版のあらすじと感想

昨年公開された『憐れみの3章』を観たことをきっかけとして、ヨルゴス・ランティモス監督の過去の作品を「もっと観てみたい」と思っていたところに、2009年の作品『籠の中の乙女』が4Kレストアでのリバイバルと相成った。そんなわけで2025年2月上旬にキネマ旬報シアターで鑑賞してきた。

おかしな家庭を舞台とした『憐れみの3章』にもどこか通じる、支配と服従、自我の目覚めの映画だ。

筆者
筆者

度肝を抜かれる刺激的な作品だゾ!

『籠の中の乙女』だいたいこんな話

ある家族の大きな家は庭にプールがあり、高い塀が敷地を取り囲むように立っている。

家族は父親と母親、青年期を迎えつつある長男、長女、次女で構成されている。父親は家の外がいかに危険かを子どもたちに教える。父親は仕事帰りに「ネコ」に襲われ血まみれになって帰ってくることもある(がそれは自ら刻んだシャツと血糊での演出である)。子どもたちは犬のように吠える練習をする。従順の証としてもらうご褒美のシールをベッドボードに貼ることを楽しみとし、その数を競う。

「犬歯が抜けたら大人」と教えられる子どもたちはその時を待つばかりである。

息子の性行為の相手として、父親は会社の警備員クリスティーナを雇いはじめた。家における闖入者たるクリスティーナはこっそりと長女や次女におかしな取引を持ちかけていた。

そして長女はクリスティーナからもらった映画のビデオで、外の世界を知ってしまい…という話。


状況や背景の説明は一切なく(なんなら家族5名の役名もなく)、しかし淡々と具体的な映像が提示され続け、常軌を逸した家庭で「純粋培養」される子どもたちの自我の芽生えが描かれていく。ヨルゴス・ランティモス監督の作家性が溢れる作品である。原題は『DOGTOOTH(犬歯)』。

2009年の作品であり、脚本は『ロブスター』『聖なる鹿殺し』『憐れみの3章』等で長年タッグを組むエフティミス・フィリップとの共作。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞、またギリシャ映画として32年ぶりにアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた作品となっている。

筆者
筆者

ギリシャ語作品なのでセリフの言語が聞き慣れないしクレジットも全くわからず妙なワクワクもあったり…!

『籠の中の乙女』感想とか

常識の外側から観るものを取り囲んでくるような作品であった。

冒頭から「どこかおかしいぞ」という状況が連なり、ただただ状況を見届けることでいよいよこの家族のおかしさが明らかになっていく、という感覚はある意味爽快ですらあった。映画を貫く「ただひたすら見せる」という姿勢によって「抑圧」、「支配」、「自由」といった概念が浮かび上がるよう仕掛けられており、強烈な設定でありながら映像の整然とした佇まいも相まって、終始どうにも引き込まれて見入っていた次第である。

比較的サブスクで観やすい『ロブスター』『聖なる鹿殺し』や2024年公開の『憐れみの3章』が好きな人には大変おすすめなランティモス初期作品であった。

筆者
筆者

2025年8月にはBlu-ray発売が決定してるゾ(欲しい)

鑑賞時にA3ポスターをもらったので部屋に飾っている。