2025年6月に観た映画

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映画館だけでなく、配信やソフトでの鑑賞も含めて今月鑑賞したものを書き残すゾ

秋が来るとき【近所のシネコン】

フランソワ・オゾン監督によるフランスのきのこ映画。

80歳のミシェルはパリからブルゴーニュの田舎へ移り、ひとり暮らしていた。近所に親友が住んでおり一緒にきのこ狩りをして、久しぶりに会える孫をもてなそうと準備する。娘と孫がやってきて料理を振る舞ったところ娘が体調を崩してしまう。使ったきのこに毒きのこが紛れていたのだ。この事件を発端として、ミシェルの抱えていた秘密が徐々にあらわになっていき、自体はあらぬ方向へと動く。罪悪感と豊かな人生の狭間でミシェルはある秘密とともに生きていく決意をし…、という話。

すべてが明らかにはならないもどかしい描き方でもって、登場人物たちはそれぞれ「良かれ」と思って行動していく。どう捉えればいいのか不安になる描き方はしかし奥ゆかしくもある。なんとも滋味豊かな作品だった。

筆者
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先月観たミゼリコルディアに続くすばらしき秋のフランスきのこ映画!

MAXXXINE マキシーン【近所のシネコン】

『X』『パール』に続くタイ・ウエスト監督ミア・ゴス主演のA24発シリーズ最終作。1985年、Xでの惨事をサバイブしたヒロイン・マキシーンはその後ポルノスターとして成功しており、次なるキャリアとして映画俳優としてのデビューも決めてスターへの道を歩もうとしていたのだが、彼女の過去が思わぬ形で忍び寄り…という話。

シリーズ通して時代背景を反映した作り込みがしっかりしており大変見応えあり。強靭な意志と坑道で自分の道を切り開くマキシーンがカッコいい。

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いいシリーズだった…!

KIDDO キドー【キネマ旬報シアター】

オランダのザラ・ドビンガー監督による母娘のロードムービー。養護施設で暮らす女の子のもとに不意に実の母親からの連絡があり、二人は再開してドライブへ行くことに。と思ったらそれは限りなく誘拐に近い形でのポーランド旅行となってしまい…という話。子供の目を通した世界がSEや字幕を駆使した遊び心あふれる映像で表現される。母親になりきれない破天荒な母と、その母に戸惑いつつも寄り添おうとする女の子のなんとも微妙な心境が伝わる素晴らしい演技も良い。

オランダでは実際にポーランド人の実の母親による誘拐というものがしばしば発生するそうで、実は背景に薄暗いものがあるのが感じられる。しかしながらポップなつくりで、余韻も決して暗くはないのがよかった。なかなか好きになった一作。

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映像が鮮烈!しつこいくらい車内でかかるStay Awhaleという曲、数日間頭の中ループしとる…(歌詞がまたなんとも映画を表していてなんとも…!)

ミッション:インポッシブル【U-NEXT】

最新作が絶賛上映中なのだが、一個も観たことがないので一旦一作目を観てみた。一作目はブライアン・デ・パルマが監督。で、楽しめた。なんか知ってる「つられた状態で床スレスレで止まるシーン」も観られて満足。

哀れなるもの【Blu-ray】

公開当時は映画館に行く習慣がなかったため見れていなかったヨルゴス・ランティモス監督作品。Disney+には加入していないので、勢いでBlu-rayを購入。脳死した妊婦にお腹の赤ん坊の脳を移植することで蘇った女性ベラが世界を冒険し成長していく、というった話。美術や衣装などビジュアル面の作り込みがすばらしく加えてなにやら不思議な音楽がついており観ていてとても引き込まれる。脚本は女王陛下のお気に入りから続投のトニー・マクナマラであり、やはりランティモス作品の中では比較的見易いキャッチーさがある。

ベラの肉体と精神が徐々に近づいていくようなエマ・ストーンの演技を始めウィレム・デフォーやマーク・ラファロなどの演技もすばらしかった。

JUNK WORLD【近所のシネコン】

堀貴秀監督の驚異的なストップモーションアニメ3部作の第2作がついに公開。ということで早速観てきた。最高である。

JUNK HEADの世界から1000年以上前の世界が舞台となる。そもそもの世界観が作り込まれているのであらすじは公式を参照されたし↓

パンフレットは破格の2500円だが大変おすすめ。150ページもあり詳細な世界観およびストーリー解説なんかもある超親切設計である。制作環境の紹介もとても詳細(器具の型番などが毎度記載されていたり…!)。今回はスタッフが倍の6人になり(少ない…!)3Dプリンタの導入などによる制作環境のアップデートなどもあったそうな。

後日別の映画を観に訪れたバルト9にて実物のロビンを観ることができた。

絶望の日【キネマ旬報シアター】

マノエル・ド・オリヴェイラ特集が気になり、時間が合ったので『絶望の日』を鑑賞してみた。

ポルトガルの作家カミーロ・カステロ・ブランコの、苦悩の末に拳銃自殺をしてしまうその間際を描いた作品。「登場人物」が急に「俳優」に切り替わりドキュメンタリックに話し始める作りは意外だったのだが、如何せんどうにも集中しづらかったのであった…。予告のカットがいいな〜などと思っていたのだが、いやはや。

JUNK HEAD【Prime Video】

先日観た『JUNK WORLD』がすばらしかったので改めて前作『JUNK HEAD』もPrime Videoにて再度鑑賞した。なかなか壮大なスケールの時間を扱っているのだが、JUNK WORLDからの地続きな世界を再確認。改めて世界観から造形まで、その執念に驚かされる。

ロスト・チルドレン【近所のシネコン】

ジャン=ピエール・ジュネとマルク・キャロの監督コンビによる1995年の作品の4Kレストアが公開されていた。他の映画のチケットを確保しようとしていたのだが、映画館のサイトでふと気になり、そのまま見る作品をこのロスト・チルドレンに変更してしまった。というくらい予告のビジュアルのこだわりが溢れていたのだ。

夢を見ることができないマッド・サイエンティストが子どもたちの観る夢を盗むべく子どもたちをさらっては実験に使っているのだが、子どもたちが観る夢がことごとく悪夢になってしまって困っている、という導入でなにやらムードがムンムンである(その科学者の顔面がものすごいインパクトで良い)。サーカスの怪力男ワンとみなしごのミエット(日本語字幕では「カケラ」という呼び名になっている)がワンのさらわれた弟を助けるべく奮闘する話である。ゴシックでいてサイバーパンクな趣が立ち込めており、さらになんともフリーキーでもあり、そのビジュアルセンスになかなか引き込まれた。ミエットの幼いながらも凛とした佇まいがすばらしく、ワンとの尊いコンビっぷりにほっこり。さらにこどもや動物もたくさん出てきてほっこり。

MOON GARDEN ムーンガーデン【シアター・イメージフォーラム】

両親の不和の最中階段から転げ落ちてしまった幼い少女エマは昏睡状態となってしまう。気づけば彼女は自らの内なる薄暗く不気味な世界に放り出される。彼女の涙を欲する飢えた怪異『ティース』に追い回されつつ、ラジオから聞こえてくる両親の声と彼らとの思い出を頼りに出口を探していく。

ライアン・スティーヴンス・ハリス監督による作品。主演のエマは監督の実の娘・ヘイヴンが演じており、当時5歳ながら非常にすばらしい演技と表情を見せてくれる。期限切れのフィルムとヴィンテージレンズを用い、CGを使わずに不可思議な世界を作り上げており、映像がとても素晴らしい。ストップモーションも交えたレトロパンクでダークファンタジーな作品となっている。物語的には中盤に「こんなもんか〜」などと思ったりもしたが、映像がラストがとても良かった。

罪人たち【新宿バルト9・Dolby Cinema】

1930年代のアメリカ南部にて、双子の兄弟スモークとスタックはシカゴから出戻り故郷で歌って踊れる酒場を始める。天才的なブルースギターを繰る従兄弟のサミーらを仲間に加え迎えたグランドオープンでは、凄まじい熱狂をみせるが招かれざる闖入者の来訪で事態は突如人知を超えたとんでもない狂乱になだれこんでいき…という話。

とんでもない展開を見せる快作音楽映画である。個人的に初めてのDolby Cinemaで音の良さも感じつつ、なにより音楽自体がともかくすばらしく大満足な一本であった。

エンドクレジットはすべて見るべし。

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話の背景にかなりいろいろありそうで気になったのだが、パンフが売り切れていた…

フォーチュン・クッキー【キネマ旬報シアター】

アメリカのフリーモントで暮らすアフガニスタン出身の女性ドニヤはフォーチュン・クッキーの工場で働いている。元は自国で米軍の通訳として働いていたのだが、国外へ脱出しアフガニスタン人の多いフリーモントへとやってきたのであった。自国民からすると裏切り者とも思われる微妙な立ち位置もあり(実際に近所の友人の旦那には嫌われてしまっており)、家族と離れて暮らすことなども相まって彼女は不眠に悩まされ、精神科でカウンセリングへと通うようになる。ある日フォーチュン・クッキーの文章の担当者が急死し、彼女が担当することになる。寂しさのあまり、彼女は自分の電話番号を紛れ込ませてしまい…といった話。

ババク・ジャラリ監督による長編。原題は「FREMONT」。スタンダードサイズモノクロ映像で描かれる静かに苦しむドニヤを取り巻く日常は、しかしどこか暖かくユーモラスである。思いの外短めでラストは余白もたっぷりで、そこがまた良かったりする。アフガニスタンの人々の背景も少し知ることができる。ちなみに主演のドニヤを演じたのも、似た境遇でタリバン政権復権時に国外脱出してフリーモントへやってきた来歴を持つアナイタ・ワリ・ザダ。

筆者
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おまけのフォーチュン・クッキーうまかったゾ

ゆっきゅん氏のメッセージ入りフォーチュン・クッキーがもらえた。香りが良くて美味しかった。

アジアのユニークな国【ポレポレ東中野】

政治にビンカンな人妻・曜子は日中1階で耳の遠い80歳の義父の介護をしつつ、2階で違法風俗で稼ぐ。夫は気付いていない。あるキライな政治家の話題を客に振りつつ、その反応でサービスが変化してしまうくら政治にはビンカンである。明るく朗らかに、介護と仕事を一所懸命こなす彼女だが、どうやら隣人がその行いに感づいているようであり…という話。

山内ケンジ監督による、リベラルな女性の善悪の境界とこの国の矛盾を楽しく観ることができるR18+の傑作。無駄のない77分で繰り広げられる不思議な見ごたえの映画となっている。クライマックスは凄まじい珍シーンであり、まったくもって必見。

筆者
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笑わずにはいられないシーンが多すぎる…!大変おすすめである。

GAMA【ユーロスペース】

小田香監督の『Underground』でも印象的な沖縄のガマのシーンだが、その素材をベースにガマに焦点をあてた53分の中編。大枠は『Underground』で松永光雄氏によって語られている話が中心でありつつ、長く使われていたり、運転する松永氏のカットが挿入されたりもする。

また英語字幕がついていたため、そちらもついつい注目してしまった。

セルロイド・クローゼット【ユーロスペース】

ハリウッド映画において、同性愛がどのように描かれ、また描かれずに来たのかを紐解くアメリカのドキュメンタリー。

昨今LGBTQを話の中心におく映画作品も増えているわけだが、そこに至るまでのなかなかに一筋縄ではいかない扱われ方が明らかになる。個人的にはなかなか興味深かった。

今月の好きになった映画【6月版】

映画館で鑑賞した初鑑賞の作品から5作品選定したのがこちら。

  • アジアのユニークな国
  • 罪人たち
  • JUNK WORLD
  • MAXXXINE
  • KIDDO
筆者
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良いの多かった…!来月は何観ようかな〜