2025年11月に観た映画

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映画館で観たものに加え、配信やソフトでの鑑賞も含めて今月鑑賞したものを書き残していくゾ

太陽(ティダ)の運命

沖縄の第4代知事・大田昌秀(任期1990~98年)と第7代知事・翁長雄志(任期2014~18年)という相剋すらあった関係性の歴代沖縄県知事の、政治的立場は違えどその沖縄の置かれた状況を変えるべく同じ方向を目指した様を追ったドキュメンタリー。

米軍の基地にまつわる問題を巡り、歴代の総理大臣が数多く出てくるのだがそのたびに冷たい虚しさが込み上げ、一方沖縄の血の通った県政を通して民主主義や地方自治のあり方、そして国の矛盾を浮き彫りにしていく。自国のことを今一度知る機会となって観てよかった作品である。傑作。

フランケンシュタイン

ギレルモ・デル・トロ監督によるかの小説「フランケンシュタイン」を映画化した作品となる。

ヴィクター・フランケンシュタインが己の欲望のために生命の創造にのめりこんでゆく物語である。そして生み出してしまった「怪物」との対峙から、「人間とは?」という問いが投げかけられる。

衣装や美術が作り込まれており目を引き、また怪物の造形なんかもとても良い。

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特に終盤の映像美にはやられた…! あとミア・ゴスさんかわいい

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊

押井守監督による名作。だいぶ昔に一度観ていたきりだったが、4Kリマスター版上映ということで観に行った。

特異な音楽と香港をモデルにした街並み、サイバーな世界観が織りなす特異すぎる映像がたまらない傑作である。

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パンフレットでかいけどおすすめ!ちょっとした演出の意味が解説されていたりしておもしろいぞ!

システム・クラッシャー【Blu-ray】

ドイツのノラ・フィングシャイト監督による長編デビュー作で、クレプスキュールフィルム配給作品。

「システム・クラッシャー」とは施設を転々とする制御不能で攻撃的な子どものことを指す言葉らしい。そんな不意に爆発してしまう9歳の少女ベニーが、幼少期の父親によるトラウマ的暴力をいまも引きずりながらいたるところで暴れ散らかし、施設を転々としていた。いよいよ居場所がなくなってしまったところに、非暴力トレーナーのミヒャが3週間の山小屋での隔離療法を提案するのだが…、という話。

母親がベニーへの愛以上におそれを持ってしまい、その悲しみがどうしようもない怒りとなってベニーを突き動かしてしまう。その全身全霊の様を演じきったヘレナ・ツェンゲルの演技がとんでもなくすばらしいのであった。

ベニーが躍動する際の音楽は軽快なバンドセットによるもので、そのビートが楽しげでいてどこか発作的、脅迫的にも聞こえ、ベニーの内面を表しているよう。

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すごい作品…!

ジュリーは沈黙したままで【キネマ旬報シアター】

ベルギーのレオナルド・バン・デイルによる長編初監督・脚本作品。

15歳の有望なテニスプレーヤー・ジュリーが所属するクラブで、信頼を寄せていたコーチ・ジェレミーが指導停止となる。別の有望なプレーヤーだった少女が自死してしまった件を受けてのことであった。クラブによりコーチに関するヒアリングがなされるなか、最も関係性が強かったジュリーはなぜか沈黙を続け…という話。

固定カメラと自然光による静かな画面でクラブでの活動や学校や家庭での生活が断片的に描かれていき、その中から沈黙を続けるジュリーの思いが静かに浮き上がってくる構成はすばらしかった。

かのテニス選手の大坂なおみがエグゼクティブプロデューサーに名を連ねている作品でもある。

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フィルムによる映像やキーとなるであろう場面での音楽もまたとてもイイぞ!

世界のショートフィルム傑作選 第二弾【キネマ旬報シアター】

先月もキネマ旬報シアターでやっていたショートフィルム特集第2弾。今回はなぜか北欧作品が多め。シアターの支援にもなるのであった。

君と空は

アイスランド作品。13分。

遠い未来、海辺で静かに暮らすヘラの家付近に嵐が接近し、息子ヤコブと彼の娘ブライルが避難のため都市へ連れ出すべくやってくるがヘラの気持ちが揺れ動き…、という話。

不思議な未来感の演出が良かっただった。冒頭の8mm?映像も良さげ。

かわいくなりたくて

これまたアイスランド作品。15分。

11歳の少年ブレキは姉と中が悪い。家族で買い物に行くことになっていたのだが、ひとり留守番をするといって姉のクローゼットや化粧品をちらかしてしまう。姉の服を着たり化粧品を使ってメイクをしていたところ、家族が帰ってきてしまい、苦し紛れに部屋に籠城した彼は姉と本音で語り合うことになり…という話。ブレキ少年がとてもキュートな一作。

ジュリアンと風

カナダ作品。15分。

冴えない少年アーサーと体格が良くイヤな奴であるジュリアンは学校の寮で同部屋に。アーサーが夜ふと気づくとジュリアンは夢遊病を発症して上裸で屋外まで歩いていってしまい…という話。

相容れなそうな二人が不思議な体験をともに過ごし、関係性に少し変化が起こる様がなんとも温かい作品。良い。

フィッシュリヴァー詩集

9分のフィンランド作品。

スーパーの鮮魚コーナーに陳列された魚たちが人生の意味を歌うというまさかのストップモーションアニメでのミュージカル。なかなか個性的な造形が面白い。

DREAM【キネマ旬報シアター】

ノルウェーのダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督による長編三部作の一作目。

17歳の少女ヨハンネが女性講師のヨハンナに恋をしてしまい、その想いと行動の顛末を手記として残す。どうしても誰かには見せたくて詩人である祖母に見せたところ「出版できるんじゃ!?」という話になり、その話が母親にも伝わり…という話。

ボイスオーバーが多用されているのが最初は違和感を感じたが、ヨハンネの主観の物語だということが強調されているためかもしれない。彼女の目を通した女性講師ヨハンナはとてつもなくステキな女性に見えるわけあが、後半は別の視点によりひとりの人間であるヨハンナを知ることとなる作りもテーマとなる「初恋」の苦い面をうまくあらわしているような気がした。

祖母・母・主人公の3世代のシスターフッド的な側面もおもしろかった。

ネタニヤフ調書【近所のシネコン】

イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフとその妻によるわりとしょうもない汚職が、今の最悪なジェノサイドにまで至ってしまった道筋を知ることとなるドキュメンタリー。汚職疑惑の捜査としてのネタニヤフ本人や関係者への警察尋問記録の一部が極秘裏に本作の制作チームへリークされたことにより作られたという経緯を持つ作品。財界やメディアとの癒着、贈収賄、利益供与などの実態が記録されていた、という驚きの内容である。

今のパレスチナでどうにか生きる人々の姿が描かれるドキュメンタリーとして『ノー・アザー・ランド』や『壁の内側と外側』を観ていたこともあり、この権力に取り憑かれたあまりに身勝手な人間の所業を目の当たりにして、どうしようもなくやりきれない想いにとらわれてしまった。

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これは是非見て多くの人に知っておいてほしい…!

ヒューマン・ポジション【Blu-ray】

ノルウェーのアンダース・エンブレム監督による作品でクレプスキュールフィルム配給作品。

新聞社に務めるアスタと、共に暮す同性のパートナーであるライヴはふたりでボードゲームをしたり古い映画を観たり料理を作ったりして穏やかに過ごしていた。ある日10年間ノルウェーで暮らし働いてきた難民が強制送還された記事を目にし、アスタはそのことを調べることにし…という話。

非常に静かで穏やかな時間を見届けるような映画であり、淡々としていながらじわりじわりと観ていて高揚するような不思議な見ごたえの映画あった。

構図のこだわりのようなものが強く感じられるのも観ていて良かった。

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なんかわからんけどすごいイイ!という感覚になったゾ。不思議なスローシネマ

旅と日々【近所のシネコン】

三宅唱監督によるつげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作とした作品。

主人公の脚本家・李が脚本を担当した「海辺の叙景」を原作とする映画がある学校で上映され、登壇した李は学生たちの感想を聞くうちに「自分には才能がないと思った」と話したりし、行き詰まっていることを感じていた。冬になりふと旅に出た李は、雪に覆われた山中のやる気のない宿の主人べん造がかろうじて営む旅館にたどり着き…という話。

2つの「旅」を通して行き詰まりな思いが静かにほどけるような味わいがなんとも言い難いのだがたまらなく良かったりした。スタンダードサイズの画面に映し出される海や雪原がとても美しく、そこも映画の魅力を大いに増していた。

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ものすごく良かったな〜また観て〜!

KILL 超覚醒【近所のシネコン】

インド映画ながらリアルなアクションを志した作品。狭いことでおなじみのインドの長距離列車に大家族的な40人の強盗がやってくるのだが、そこには激強な軍人が乗り合わせていて…という話。

30分以上かけて決定的なことが起きてしまい、そこでタイトルが入り以後その名の通りとんでもない覚醒をみせる構成にグッときた。本当に容赦ないのである(あと打たれ強すぎる)。なかでもある心理的な攻撃にはまじでゾッとした次第である。

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レクター博士もびっくりの早業!こえー!

LOVE【キネマ旬報シアター】

ノルウェーのダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督による長編三部作の二作目。

泌尿器科に勤める医師マリアンヌと看護師トールは、ともに独身で一般的(?)な恋愛とは一線を画して生活してきた。マリアンヌは紹介されたバツイチ子持ち(隣人が元妻)という男性との恋愛に前向きになりきれず、帰り道のフェリーであったトールにマッチングアプリによるカジュアルな出会いを勧められる。一方、いつもどおりカジュアルに同性との出会いをしようと引き続きフェリーに乗っているトールは、精神科医ビョルンと知り合ったのだが後日勤務先の病院で見かけ…という話。

DREAMにつづき、一風変わった恋愛譚なのだがなんとも優しげなムードにほっこりできる一作。今回も会話劇がおもしろかった。

ジェイコブス・ラダー【キネマ旬報シアター】

4Kリバイバル作品。なかなか衝撃的な恐怖を味わってしまった…!

ストップモーション【Blu-ray】

年始に観た映画のソフトを購入。劇中出てくる印象的なストップモーションアニメ用の人形が忘れがたく、再見した。

なかなか痛い作品。

ベ・ラ・ミ 気になるあなた【ユーロスペース】

中国の極寒地域で、抑圧された社会で足掻く性的少数者の孤独と試行錯誤が寒々しいモノクロ映像で描かれていく。

なんとも愛おしくなる冴えないおじさんたちのリアルな存在感がとてもイイ作品。

火の華【ユーロスペース】

実際に報道された自衛隊日報問題から着想を得た作品。素晴らしい傑作だった。

自衛隊として派遣された南スーダンの非戦闘地域で発生してしまった戦闘により親友を失い少年兵を殺してしまった男が、PTSDに苦しみながら花火師として働いていくのだが、過去の影が迫り…というもの。

「平和国家」である日本ゆえにあまり描かれなかった戦争によるPTSDの過酷さとともに、戦うことと平和の在り方、そしてそれらを為す人間そのものを問う骨太な作品であった。

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今年出会えてよかった一本…!

八つ墓村【新文芸坐】

ご存知八つ墓村を、ヨウゾウ大好き平山先生が縦横無尽に語り尽くすトーク付きイベントで上映という破格のコンテンツ。新文芸坐さんいつもありがとう。

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最高でした!

異端者の家【Blu-ray】

春頃に観てなかなか気に入ったA24作品。ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー、クロエ・イーストの演技合戦の見応えがすごい!

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終盤、シスターパクストンの表情がグッと変わるとこ好き

SEX【キネマ旬報シアター】

ノルウェーのダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督による長編三部作の三作目。一番会話劇の面白さが出ていたかも知れない。

煙突清掃業者の男が同僚に「夢でデヴィッド・ボウイに女として見られた」と打ち明けたところ、同僚の男は「昨日、客の男とセックスをした」と打ち明けてくるところから始まる。男性中心の職業らしい煙突清掃業者であるふたりとも妻帯者でありゲイでもないく、しかしジェンダーやセクシュアリティを揺るがす体験をし、同僚やパートナーとあれこれ会話していく、という話である。

落下の王国【近所のシネコン】

衣装・ロケーション・美術などが織りなす圧倒的に素晴らしい映像美を持つ作品の4Kリバイバル。映画でしか見れない世界が広がっていた。

みかんの収穫時に落下して骨折してしまった5歳の少女アレクサンドリアが病院で足を怪我して動けないスタントマン・ロイと出会う。失意のロイは自殺用の薬を取ってこさせようと、アレクサンドリアの気を引くべく作り話を聞かせていく。それは多くを失いつつも巨悪に立ち向かうべく立ち上がった6人の勇者の物語であった…というもの。

圧巻の映像と温かな物語がとても良かったのであった。

ジガルタンダ・ダブルX【Blu-ray】

昨年観た傑作インド映画のBlu-rayをインド的なイベントで入手できたので再見。

やはりシーザー登場の音楽は否が応でもテンションが上がるたまらないものがった。

ドミニク 孤高の反逆者【近所のシネコン】

コロンビアに流れ着いた正体不明のグリンガ(よそ者の白人女性)ことドミニクが、腐敗した警察と麻薬カルテルを殲滅する痛快アクション。

とにかくウクライナ系アメリカ人であるオクサナ・オルラン氏がかっこよく、楽しめた。

筆者
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ふらっとレイトショーで観て満足できる一作

ブルーボーイ事件【近所のシネコン】

高度経済成長期の日本で起きた、性適合手術の違法性を問う裁判を取り巻く人々の物語。

1965年、戸籍は男で性適合手術を受けた「ブルーボーイ」は売春防止法での摘発対象にならずに警察を悩ませていたのだが、そんな折に手術を行ったある医師が「優生保護法」に違反するとして医師の赤城が逮捕・裁判にかけられてしまう。弁護士狩野は承認として手術を受けた数名に声を掛け、まだ最後の手術を実施できていないこの状況にサチは思い悩むことになり…という話。

自分自身でいようとすることの尊さをものすごく感じさせる題材であり、ところどころ泣かされていた次第である…。

女性の休日【キネマ旬報シアター】

1975年にアイスランドで90%の女性が一斉に「休日」をとった歴史的な1日を紐解くドキュメンタリー。力強い意志とユーモアでもって連携し、平等を目指して大いなる一歩を踏み出すさまを当事者のインタビューと印象的なアニメーションで描いていく。女性たちの役割の大きさを示すことで、国と社会を動かし、その後に夢を勝ち取っていった女性帯のかっこよさといったら…!

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これも自分自身でいることを求める人々のえいがだった…!

WEAPONS ウェポンズ【近所のシネコン】

なにやら話題のホラー映画。なかなか混み合っていた。

語り口が独特であり、複数視点でのタイムラインを順に描くことで、どこに向かっているのか?と思わせつつも事件の真相に近づいていく構成とカメラワークに目を見張るものがあった。ぎりぎりなんのこっちゃ!?となりそうな種明かしだが、クライマックスが面白すぎて最高に面白かったのであった。

監督のトラウマと、それに対する癒やしの行為として書かれた脚本だそうで、なるほど〜となったりもした。

筆者
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アルコールの摂取し過ぎには気をつけよう!

今月の好きになった映画【11月版】

映画館で鑑賞した初鑑賞の作品から5作品選定したのがこちら。

  • 火の華
  • 旅と日々
  • WEAPONS ウェポンズ
  • KILL 超覚醒
  • ベ・ラ・ミ 気になるあなた
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良いの多かった…!来月は何観ようかな〜