2025年5月に観た映画

筆者
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映画館だけでなく、配信やソフトでの鑑賞も含めて今月鑑賞したものを書き残すゾ

ミステリアス・スキン【近所のシネコン】

グレッグ・アラキ監督の2004年製作の作品がこの度日本で劇場公開ということで鑑賞。

男児への性的虐待が犠牲者へと及ぼす問題を克明に描く傑作青春映画。映像と音楽も素晴らしい。ブルータリストの監督ブラディ・コーベットが主演俳優として出演している。

近所のシネコンで鑑賞。

映画『ミステリアス・スキン』のあらすじと感想 『ミステリアス・スキン』を観た!【悲痛】

クィア【近所のシネコン】

ルカ・グァダニーノ監督によるウィリアム・バロウズの原作小説をもとにした映画。主演はダニエル・クレイグ。

後半の密林探検がスゴイ。なんともピュアなラブストーリーなのであった。

近所のシネコンで鑑賞。

映画『クィア』のあらすじと感想 『クィア』を観た!【ルカ・グァダニーノ】

Underground【キネマ旬報シアター】

小田香監督の2024年製作の最新作。地下世界三部作の最終作となる印象的なドキュメンタリー(?)。

北海道から沖縄までの、日本の各地の地下世界の記憶を無二の映像と音像でもって辿る。吉開菜央氏が演じる、『ある女性の姿を借りた「シャドウ(影)」』が、地下世界とその周辺をしなやかな実在感を伴って徘徊していく様(と日常生活)によって、それぞれの地下世界の記憶がどこかでつながっているような感覚にもなる。

16㍉フィルムで撮影されたという美しい映像と、これまたどこか不思議な響きの音によるすさまじく特異な映画体験に魅入ってしまった。

キネマ旬報シアターにて鑑賞。

鉱 ARAGANE【キネマ旬報シアター】

2015年制作となる、小田香監督の地下世界三部作の最初の作品。こちらもキネマ旬報シアターにて鑑賞。

地下300m、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのブレザ炭鉱の地下世界に迫るドキュメンタリー。鳴り響く機械音とヘッドランプがほぼ唯一の光源となる暗闇にて、死と隣り合わせであろう環境で坑夫たちが泥だらけになりつつも働くさまは美しさすらある。

Undergroundでの圧倒的に美しすぎるフィルム撮影による映像も大好きだが、一方で鉱 ARAGANEで描かれる過酷な環境にて暗闇を切り取るということは、機動性とセンサー感度を併せ持つデジタルでなければなし得ないのではなかろうか。そんなわけでデジタルカメラの大いなる魅力に触れた気がする作品でもある。

併せて以下のインタビュー記事を読むのがおすすめ。

そして、アイヌ【キネマ旬報シアター】

よく知らないでいたことを知りたいと思って観に行ったドキュメンタリー。

都内にあるアイヌ料理屋さんの店主でアイヌ文化アドバイザーの肩書も併せ持つ宇佐照代さんと多様なルーツを持つその周辺の人々の活動を通して、アイデンティティとはなんなのかを問う。

となっている。自国の歴史の中で、マイノリティの立場に置かれた人たちのとてつもない苦悩と、それでも強く生きてきた姿、受け継がれる意志に心揺さぶられ。

多くの人に観て欲しいドキュメンタリー映画である。

キネマ旬報シアターにて鑑賞。

スカーフェイス【新文芸坐】

ブライアン・デ・パルマ監督、アル・パチーノ主演によるマフィア映画の金字塔的作品。キューバからフロリダへやってきた男がギャングとして成り上がっていく。

『平山夢明のシネマdeシネマ』の平山夢明先生とギンティ小林氏のトークショーを聴くべく新文芸坐にて鑑賞した(先んじて動画も公開されている)。

新文芸坐の大画面・迫力の音響で堪能できたうえに、平山先生によるすばらしい解説で大満足の映画体験となったのであった。

サブスタンス【近所のシネコン】

50歳の誕生日に番組の降板を言い渡された往年の名女優エリザベスが、禁断の若返り術に手を出してしまい遵守すべきそのルールを破って大変なことになり…、というコラリー・ファルジャ監督によるボディ・ホラーな作品。アカデミー賞5部門ノミネートで、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞している。ビジュアル面サウンド面でとてもカッコ良い。主演のデミ・ムーアが全力で体を張った役を演じているところに凄みを感じる。

設定的に『そうなるよね』という展開ではあるものの、そんなことお構いなしにぶちまけてくる勢いにはぶったまげた。女性に対して若さや美を求め搾取してきた業界や社会への怒りに満ちた快作。メイキング映像も楽しいので要チェック。

ノスフェラトゥ【近所のシネコン】

ウィッチ』『ライトハウス』が良かったロバート・エガース監督の新作。今回も怪異の伝承をベースとしておりムード満点。監督が幼少のころに魅入られたという1922年のサイレント映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」のリメイク的な作品となる。

月光を再現しようと試みた照明は彩度が低く(特に序盤は)とにかく薄暗い。観ていてうっかりやや入り込み損ねたが、中盤からだいぶ引き込まれた。衣装なども美しく、映像のこだわりが伝わってくる作り込み。撮影監督ジェアリン・ブラシュケのインタビュー記事を読んでから観たかった気もしてしまった。リリー=ローズ・デップの憑依的な演技やノスフェラトゥの声の作り込みなどにも驚かされる。ラストカットの壮絶さはカタルシスあり。

ガール・ウィズ・ニードル【近所のシネコン】

マグヌス・フォン・ホーン監督による、第一次世界大戦直後のデンマークにて実際に起きた哀しい殺人事件をもとにした物語。当時の社会によって権利を蔑ろにされてきた女性たちのあまりの痛みと哀しみに押しつぶされそうになる。モノクロの映像は色を感じさせるほど作り込まれており、不穏すぎる音楽もすばらしい。脚本・撮影・演技が一体となった、ひたすらに恐ろしい傑作。

ノイズが言うには / あの優しさへ【キネマ旬報シアター】

前の週に引き続きキネマ旬報シアターにて小田香監督特集。

中編『ノイズが言うには』は留学先の大学の卒業制作として、帰国時に作られた。主人公が23歳の誕生日に、性自認を家族へカミングアウトするのだが、両親から理解が得られずに落胆し、その様を改めて家族に協力してもらって、それぞれが本人役を演じ映画化する、という工程を見せる映画。監督がカメラの持つ暴力的な性質を強く感じるきっかけとなったパーソナルな映画でもある。

その時以来の胸のつかえてきなものに向き合ったのが『あの優しさへ』であり、母親との私的な映像やサラエボで映画を学んでいた中での未使用フッテージで構成されたこれまたパーソナルな内容。

セノーテ【キネマ旬報シアター】

小田香監督の地下世界三部作の二作目。メキシコのユカタン半島北部のセノーテと呼ばれる数千と点在する泉にスポットを当て、ダイビングの資格をとって撮影に臨んでいる。水中はiPhone、地上では主に8mmフィルムで撮影されている。観たことのない景色が映し出され、さらに現地の方によるマヤ語での伝承などもナレーションとして入り、遠い土地の記憶を垣間見るような体験ができる作品である。

トレンケ・ラウケン【キネマ旬報シアター】

アルゼンチンのラウラ・シタレラ監督によるPart1,Part2からなる4時間超えの謎の長編映画。

消えた植物学者の女性ラウラを探し、恋人や同僚が彼女の手がかりを追っていく映画、かと思っているとわらしべ長者的に気づけば思わぬところまで連れて行かれてしまう。迷宮的ミステリーな不思議体験がなんとも鮮烈。

なんだか好きな映画である。

サスカッチ・サンセット【ヒューマントラストシネマ有楽町】

サスカッチ(いわゆるビッグフット)4頭の仲間探しの旅を描く不思議映画。北米の霧深い山林の映像ですでになんかわくわくする。春夏秋冬を通した1年の旅の中で「人」の存在が徐々にほのめかされるが、最後まで人は出てこない。

珍な映画かと思いきやただならぬ哀愁が立ち込める作品。おもしろかった。

グレース【新文芸坐】

昨年観た中で最も好きな映画が新文芸坐にて上映されると聞きつけて観てきた。大画面での鑑賞は大変良い。

序盤の何気ない会話の内容を失念していたのだが、改めて観てハッとするものもありこれまた好きになった次第である。

岸辺露伴は動かない 懺悔室【近所のシネコン】

テレビシリーズが好きだったので鑑賞。テレビの2時間スペシャル的な満足感であった。

メイデン【キネマ旬報シアター】

カナダのグラハム・フォイ監督の初長編作品。16㍉フィルムの粒子の粗めな映像で描かれる、青春の中の孤独と哀愁に完全に心を掴まれた。

気ままに暮らす親友同士の高校生の少年2人に訪れる悲しみが、失踪した少女の孤独と優しくリンクしていく。なんとも心に残る素晴らしい作品である。

IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー【キネマ旬報シアター】

レオス・カラックス監督の引用や過去作品、資料映像などを紡ぎ描く心象風景的な42分ほどの作品。予告がやたら気になったので観てみた。事前知識もないままに観たのでよくわからん状態ではあったが最後に謎の感動に包まれる。

今月の好きになった映画【5月版】

映画館で鑑賞した初鑑賞の作品から5作品選定したのがこちら。

  • メイデン
  • トレンケ・ラウケン
  • ガール・ウィズ・ニードル
  • サブスタンス
  • Underground
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来月は何観ようかな〜